2024年2月26日お知らせ | 大妻女子大学 人間関係学部 共生社会文化研究所 - Institute of Inclusive Society and Culture

お知らせ

大妻保育臨床研究会主催『保育領域に心理職は必要?〜保育領域、地域、心理職の声を集めて考えるシンポジウム〜 』が開催されました。

2024年2月26日

シンポジスト

石阪恒子(おだ認定こども園 施設長)

若松育子(島田療育センター 臨床心理科 科長)

春日 文(大妻女子大学 人間関係学部 社会・臨床心理学専攻 専任講師)

司会

田中 優(大妻女子大学 人間関係学部 社会・臨床心理学専攻 教授)

2024年2月18日(日)大妻女子大学 多摩キャンパスにおいて「保育領域に心理職は必要?〜保育領域、地域、心理職の声を集めて考えるシンポジウム〜」がハイブリッド方式で開催されました。子どもに関わる保育者、行政関係の方々、心理職、本学の学部生・院生など40名を超える参加者が集まりました。

はじめに:
大妻保育臨床研究会代表で司会の田中優先生より開会の挨拶と趣旨説があり続いて3名のシンポジストの発表がありました。

田中先生:
「全国の小中高校、大学などの教育現場においては、心の専門職としてスクールカウンセラーが配置され、児童・生徒・学生、また、教職員が抱える様々な問題に対して成果を上げています。しかし、ほとんどの保育領域では、専門職としての心理職は配置されていません。保育領域に心理職は必要なのでしょうか?シンポジウムでは認定こども園、地域の療育施設、心理職、それぞれの声を集めて、この問題について考えてみたいと思います。」

シンポジストの発表
石阪恒子先生(おだ認定こども園)より、特別な支援が必要な子どもの育ちを包括的に支える取り組みについて話題提供がありました。巡回相談を通した心理職との連携や島田療育センターの施設支援を利用して心理職と連携することにより子どもの成長が認められる、とのお話しがありました。また心理職への期待として、早期に支援の必要な子どもをアセスメントすることで環境整備ができ、発達課題への取り組みが可能になることが挙げられました。また定期的、継続的に心理職が関わり、保育者の支援、保護者や子どもの支援をすることで子どもの育ちを支えることができ、小学校へのスムーズな接続につながるのではないか、と心理職への期待が語られました。

若松育子先生(島田療育センター)より、島田療育センターにおける地域支援活動の取り組みについて、発達支援センター『セブンクローバー』や障害児(者)地域療育等支援事業、在宅支援外来療育等指導事業、受託事業など多彩な活動のご紹介がありました。たとえば、在宅支援外来療育等指導事業の『子育てひろば』は、保護者同士で悩みや情報を共有する機会になっており、子どもの支援、保育者の支援に加えて、保護者の支援の重要性も話題になりました。最後にこれまでの長年の活動経験から、心理職が保育領域に関わることで、子どもの課題に早期に介入できること、子どもに『助けを求める』、『失敗してもやりなおせる』など、柔軟な考え方があることを伝えられること、自己肯定感の維持が期待できることなどについてお話がありました。

最後に本学の春日文先生より、大妻保育臨床研究会のこれまでの活動として、保育現場での心理支援に関する文献研究や、気になる子の定義に関する文献のレビュー論文などについて紹介がありました。また多摩市内3園の管理職と保育士に対するインタビュー調査についてテキストマイニングによる分析の結果が報告されました。さらに 2024 年度に行われる保育現場における心理支援(アクションリサーチ)の研究計画も紹介されました。

休憩を挟み、シンポジウムの後半はフロアとの間で、心理職が園を訪問する場合の頻度について、あるいは保護者への対応に関する心理職による助言への期待などを巡って質疑応答が行われました。多種多様な仕事を担任の保育士が一手に引き受けている現状の大変さがあり、心理職による保育者支援により、保育士の業務の分散化へ繋がるのではといった意見も上げられました。まだご意見やご質問がありましたが時間となり閉会しました。

大妻保育臨床研究会では、今回のシンポジウムの内容や参加した方々のアンケート結果を踏まえつつ、さらに実践的な研究活動を進めて行きたいと考えております。

春日文,田中優,廣瀬雄一,古田雅明(2022).保育現場における心理支援の内容と課題ー国内文献の分析からー 人間生活文化研究, 32, 1-15

廣瀬雄一,春日文,黒川こころ,宗杏佳音,田中優,沼田真美,古田雅明,柳川麻華(2023). 保育領域における「気になる子」の定義に関する考察―先行研究の知見をもとに―大妻女子大学共生社会文化研究,1,1-8

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